天文十九年(1550)
同じ旧白山町の成願寺の永正十六年銘の地蔵さんについて 太田古朴氏は「様式に奈良市伝香寺の永正十二年大型地蔵石仏に似た衣文の処理が見られる」※「三重県石造美術」と書いていいますが 奈良伝香寺の地蔵さんに似た地蔵さんが白山にはもう一体あります
津市白山町南出の信蓮寺 本堂前に天文十九年(1550)銘の地蔵さんが立っています
お寺のホームページには『近畿地方で最大の地蔵菩薩』とあって 地蔵さんの全高は259cmもある大きな地蔵さんです
上が伝香寺の地蔵さん 下が成願寺の地蔵さんです 三体の地蔵さんの造立は 伝香寺 永正十二年(1515) 成願寺 永正十六年(1519) 信蓮寺 天文十九年(1550) 三体の地蔵さんはこの35年の間に造られています
光背にある銘文もよく似ています
伝香寺の地蔵さんには光背像脇の左右に『為三界万霊法界衆生』の銘文がありますが 信蓮寺の地蔵さんの光背右側には『三界万霊法界衆生等』と読めます 成願寺の地蔵さんには『於当寺仏前為法界衆生造立之』とあります どうやら成願寺と信蓮寺の地蔵さんを彫った石工は伝香寺の地蔵さんを見ていたようです
さて信蓮寺の開創は天正八年(1580)とあるので 信蓮寺の地蔵さんは信蓮寺ができる30年も前からすでにそこにあったことになります 天台真盛宗に連なる古寺がこの辺りにあったのかもしれません
参考書籍
「三重県石造美術」P81 太田古朴
「はくさんの石造物-倭地区•補遺編」P50 三重県津市教育委員会
「三重一志 白山町文化誌」P855 白山町郷土史編集刊行委員会 編
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