鎌倉後期
上長瀬の国津神社の右隣に「上長瀬庵」というお堂があります 中に入ると中央の三十三所観音石仏に目を奪われるのですが その左にも美しい阿弥陀さんが立ってみえます
舟形石に厚肉彫りされた阿弥陀さんですが 火災による損傷が激しく頭部と袈裟の一部しか残っていません 鎌倉時代末期の作といわれています
この阿弥陀さんは日神型の石仏に分類されます 上長瀬庵の前を通る県道を南に向かうとほどなく日神墓地の石仏群ですが この阿弥陀さんも火災に逢う前は日神の阿弥陀さんに似た姿だったろうかと想像します
日神型石仏と呼ばれる石仏の一群には 日神墓地の阿弥陀石仏の他に蓮池蓮生寺の阿弥陀石仏や森寺長隆寺の阿弥陀石仏に見られるように 袈裟の着方が通肩であったり 衣文が膝を包み込むような独特の流れ方をしているなど 共通した特徴があります
長瀬の東に接する高尾万松寺の阿弥陀石仏は立像ですが これも同様の特徴が見られ 鎌倉時代の終わり頃 この辺りに腕の良い石大工の行き来があったと想像されます
阿弥陀さんは大きく傷ついていて 衣文の様子も蓮座の様子も失われています 痛々しいですが美しい仏さんです
参考書籍など
「名張の金石文撰ー石仏•石塔編」P118 名張金石文研究会
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